Fender Mustang (アメ車のマスタングとは違います)
Made in Japan
執筆:2010-06-02
人が何かを欲しくなる時、というのはどんな時なのか?
iPadが発売され、TVやニュース、TwitterでもしばらくはiPadネタが続きそうな気配ですが、先日ちょっと面白いフレーズを耳にしました。
従来のモノづくり、コンピュータに限らずですが、特にテクノロジー分野においてはこれまで、高性能、高機能、多機能という方向性で急激な進化発展を遂げてきました。
半年前の新製品は次の新製品の投入と同時に半値近くで投げ売りされる。
人々は”高性能”に対して自分が汗水流したお金をつぎ込むのでしょうか?
与えたものと得たものは等価。
性能は日進月歩。これに対して得られるものとは、最新機種を使っているという優越感。これも立派な動機となりえますが、ことiPhoneやiPadについて言えば、それほど高性能なCPUをはじめとしたマシン性能を誇っている訳ではなく、これを手にすることで得られる無限の可能性に対して魅力を感じており、それが世界的なヒットにつながってるのではないか?と思うのです。このあたりはAppleという会社はすごく上手い。
AppleはH/Wのみならず、音楽配信システム、周辺機器規格といった独自のエコシステムを構築し、先日Microsoftを抜き時価総額で世界一位のIT企業になりました。
この根底には、モノづくりへの真摯な姿勢と妥協を許さない「原型」へのこだわりがあります。余計な機能を一切排除し、明確なコンセプト(iPod=手持ちの音楽をすべて持ち出してエンジョイしよう!)により、消費者である我々も、これを使う事で無限に広がる可能性に夢を馳せることが出来るのではないでしょうか?
高性能、高機能という方向でないベクトルで勝負をしているからこそ、他の携帯電話機のような短いライフサイクルでなく、いまだにiPhone3G(Sでは無い)が現行機として店頭に並び、在庫に悩まされることも少ないのではないでしょうか?ある意味エコ。
さて、前置きが長くなりましたが、私がこのギター、ムスタングを購入した動機についてお話させて頂きます。
すでに自宅には毎日異なるギターを弾いたとしても土日含めた一週間、毎日新鮮な気持ちを味わえる状況にあって、なぜに更なるギターなのか?
それは、「他では補えない、唯一無二の魅力があるから」でした。
この場合、何をおいても、
・アーミングアクション と
・持って立った時のバランスの良さ
でありました。
元々はストラトキャスターのジュニアモデル/廉価版として企画発売された小ぶりなボディーは、ショートスケールネックと相まって取回しが非常に良い。
また、ストラトでは味わえないアームアクションが行えるダイナミックビブラートと呼ばれるトレモロユニット機構により、アームダウンのみならずアップもできるのねぇ~。的な、恐らく興味無い人には全く価値観を見いだせない”魔力”によって、鷲掴みされた私のハートは寝ても覚めても、居ても立っても、ニッチモサッチモゆかなかった訳なのです。
このギターを使っている有名なミュージシャンといえば、ピンククラウドのチャー。(たぶん、分からない人の方が多いかもしれませんが)
1964年に発売されたこのギターが急に欲しくなり(元々影響されやすい性格にて、友人宅でピンククラウドのライブビデオを見て、翌日)楽器屋さんに行きました。
ギターといえばコンピュータとは異なりオールド、ビンテージが持て囃されるものです。
例によって楽器屋さんにはムスタングの中古機が数本展示販売されていました。
いくつかの年代のものを試奏しましたが、どうもしっくりこない。
一言で言えば、元々オモチャみたいなこのギター、古くなればそのまま古いオモチャの感覚なのです。
いわゆるレスポールやストラトなどのオールドモデルにある枯れたサウンド、熟成されてにじみ出るナイスミドルの魅力というものが全く出ておらず、ショボイ。
一言で言えば「魅力に欠ける」
あれ?この人ってこんなにくだらない人だったのかしらん?
がっくり来ている私を見て店員さんが一言。
ムスタングに限って言えばジャパン(日本製)が良いですよ。
おお、そうかね?では一つ。
試奏させていただいて、しっかりパワーあふれる音が出る。アーム後の精度も高い。
これだ!これしかない! これ下さい!
家に帰って嬉しくって、少し前にステージ用に購入したアンプ、フェンダーUSAプリンストンコーラスに直結して弾きまくった所、お隣さんから「下の子が受験なので、、、」とやんわりクレームを頂きました。
こぶりなボディーとダイナミックなアームアクション。これが私の欲しかった明確な動機であり、それが十分に満たされたことでしばらくは大満足、天にも登る気持ちでした。
実際にはシングルコイルピックアップで音自体は線が細く、エフェクターと呼ばれる音加工装置を通して初めて良い音が出るギターですので、アンプ直結が基本の私には、ステージでの利用はマッチせず、もっぱら家用ギターとして数年間、不動の地位を確保しておりました。
しかし人間の欲望は尽きません。人の心はウツロいやすく色あせやすい。
新たなデザイヤーが私を襲う!
次回、「飽くなき探究心」、か弱い求道者を襲う! 驚きのローンシステムに迫ります。
■今回の学びポイント:
・提供側は自分目線ではなく、消費者目線でモノづくり/サービス提供に努めるべし。
・明確なコンセプトはコアなファンの心を動かす。その為には余計な機能をゴテゴテつけず、逆に削ぎ落としきるべし。
・人の印象はちょっとした(本人は気付けない些細な)事で大きくプラスからマイナスに振れる。好きという感情が大きければ大きいほどに覚めた時の落差(振れ幅)は大きい。
我々もサービスプロバイダとして、日々研鑽、努力を欠かしてはいけませんね。