ついでにもう一本。
1990年の夏。もう20年も昔の話です。蒸し暑い日やった。。。
大学の駐輪所でバイクのカスタマイズを行っていた時、後輩が後ろから声を掛けてきた。
「前田さん、今から僕、ベース買いに行くんですけど付いて来てくれないですか?」
「おお、柳川やないか。なんやその服、緑のジャンパーに茶色いジーパンて、木ぃみたいやなぁ」
「どこが木ぃなんすか!なに言うてますのん。んで、一緒に行ってもらえますぅ?」
「おお~ええでぇ。ちょーど俺もレコード見に行きたかったんや。行こ行こ」
明石からなんばへ、56kmのロングドライブ。
実は私は他人の買い物に付き合うのが苦手なのです。
あれでも無い、これでも無い。どーすか?これ、似合いますか?
やっぱこれがエエかな?
(好きなん買うたらええやんか)
もー、ちゃんと一緒に考えて下さいよ!僕に似合うかどうかちゃんと見てぇ!
(俺が弾くのちゃうやろ? ましてや君、俺の彼女でも何でも無いやんけっ)
ちょっぴり飽きてきた私は早くレコード屋さんに行きたくて、後輩には適当なベース見つけて
「おー、これオマエにピッタリや。これにせえ、これ!」
「まじっすか?ちょっと弾いてみてもええっすか?」
「おー、木目調で今日のオマエの服にもぴったりやんけ」
「なんなんすか?真剣に選んでくださいよ!」
完全に飽きてしまった私は店内をブラブラと。。。
一瞬通り過ぎてふと思った。
あれぇ?師匠?
2、3歩戻ってよくよく見ると、我が心の師匠ジョニーウィンターのトレードマークである火の鳥、Fire Birdがちょんっと置いてある。
今でこそ復刻版も出て楽器屋でよく見る風景ではありますが、その当時は大変に珍しい光景。
しかしどこかオカシイ。値札が付いてない。
即刻店員を呼びよせ問いただしてみると、丁度本日入荷した正真正銘のオールドギター。
今日午後届いて開梱して加湿器を適度に当てながらコンディションを整えた後、ショーウィンドウに飾られる予定であるとの事。 ほほう。。
私はやさしく店員の肩を抱き「ちょっとこっちで相談しようじゃないか」
その店員は値段も解らないとの事。
君では話にならん。店長を呼んでくれたまえ。
1963年発売からわずか3年弱しか生産されなかったリバースモデル。
この'64年製FirebirdIIIは世界で1254本しか出荷されていない。
スルーネックと呼ばれる、ネックとボディーが1ピースで出来ている特殊な構造。
ヘッドの裏に垂直につくペグは、他のギターには無い斬新な形。
このバランスの悪いギターを使ってるミュージシャンはそれほど多くないが、私が師匠と仰ぐジョニー氏の他に、これまた私の尊敬するブルーズ界の暴れん坊、クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンも愛用していました。
楽器屋での出会いはまさに運命。
このタイミングを逃しては一生出会えない(はず)。このチャンスを活かさないと一生後悔する!(に違いない)
元々燃えやすく冷めやすいのが私の性格ですが、このときは一挙に血がたぎりました。
店長が絶対に駄目だというのを無理からに試奏させてもらう。
フェンダーツインリバーブから鳴り響くレコードそっくりの音。
完全に酔いしれました。
元々売り物として考えてなかった店長となんとか交渉し、次の約束を条件に売ってもらう事に成功。
1.手放す時は必ずウチに持ってくる事。他店へ売らない。
2.スルーネック&リーバスヘッド、ボディー形状が特殊なので、安定性が悪く且つ、ネックが非常に弱い。十分すぎるぐらい気を付ける事
3.万一倒したりして折れた場合には破片、欠片を全てかき集めて拾って持ってくる事。
(オリジナル素材で復旧しなければ価値が更に下がるので)
4.ちゃんと大事に面倒見る事
5.ライブで使う場合には、必ず店長に声を掛ける事
4とか5は大きなお世話やなぁと思いながらも、全て約束する事を誓って入手成功。
今考えても、破格の値段で手に入れた事になります。
とは言え、当然、学生の身。手持ちも数千円しかなかった私にとって、ぱっと払える額ではない。
そんな時、有難かったのがオリコのローン。
この後、一時期カード地獄に陥り大変な思いをする事になりますが、それはまだしばらく先の話。
全額フルローンにて意中の愛機を手に入れた私は、年代物のケースを手にお店を出た後、駐車場まで歩いてから後輩を店に置き忘れていたことを思い出しました。
忘れてごめん、柳川。
■今日の格言:身の丈に合った買い物をする事。短気は損気、衝動的に行動しては危険。
■Gibson Fire Bird III '64
SerialNo.174086 (1964年製)
ソリッドボディー、スルーネック。いずれもマホガニー材
ローズウッド指板、2ピックアップ
2ボリューム、2トーン、3WAYトグルピックアップセレクタースイッチ
Gibson Fire Bird III '64
SerialNo.174086 (1964年製)
学生時代、一目惚れして手に入れた思い入れ深いギター。千数百本しか世に出てないオリジナルのうちの一本、との事。詳しくは「ノート」で。
https://www.facebook.com/note.php?note_id=157080867655790
https://www.facebook.com/note.php?note_id=157080867655790
追記:
一目ぼれして手に入れたこのギターでしたが、大学時代に一度だけロックバンドでお披露目した後はほぼ活躍シーンもなく、家弾きにも向いてないためずっとケースに仕舞われたままでした。それはギターとして幸せなことでは無いだろうと、あと諸々あって2018年9月に手放すことにしました。
♬ 今度は! 幸せにぃ~ 暮らしなよ





